鼓膜チューブ留置術は「鼓膜チューブ挿入(留置)術」とも呼ばれる療法で、鼓膜切開術を行っても再発を繰り返してしまう場合などに行われる手術療法です。
鼓膜の内側と外側の圧を一定に保つ耳管機能が期待できない場合は、耳管に代わる中耳圧調節や中耳粘液の排泄の経路を鼓膜チューブで行います。
なかなか完治しない滲出性中耳炎の治療では、鼓膜切開を行い、滲出液を排液しますが、鼓膜に空いた穴が閉鎖したあとも滲出性中耳炎を繰り返す場合、鼓膜にチューブを入れる必要があります。
鼓膜チューブ挿入後の鼓膜
鼓膜チューブ留置術は、鼓膜ドレーンという小さなチューブを鼓膜に挿入して滲出液がたまらないようにし、耳管の代替とし、中耳の粘液の排出や換気を行うためのものです。
乳幼児のような未熟な耳管では鼓膜チューブ留置は一時的で、耳管機能が成熟すれば鼓膜チューブは不要になりますが、高齢者の場合のように耳管機能の改善が期待できない場合には鼓膜チューブは常時必要になる場合もあります。
一般には耳管の働きが正常化する6~7歳までに滲出性中耳炎は自然治癒することが多いです。
鼓膜チューブは外来で局所麻酔で簡単に挿入できますが、乳幼児でじっとしていることが難しい場合は入院して全身麻酔下で挿入することになります。
一般に鼓膜麻酔はイオントフォレーゼという方法で4%キシロカインという麻酔液を電気分解して鼓膜を麻酔します。麻酔時間は10分程度です。鼓膜切開刀で鼓膜を少し切開し、シリコン製の小さな鼓膜チューブを留置します。
鼓膜チューブは身体にとっては異物ですので、通常ある一定期間で自然に排泄されます。
このような場合には必要に応じて鼓膜チューブ留置を繰り返す場合もあります。
鼓膜チューブ留置中は入浴や洗髪は通常通り行えますが、感染防止のため、水泳は耳栓をすることが望ましいです。
チューブ留置による切開痕は通常、自然に閉鎖し、聞こえに影響がでるようなこともありません。
チューブはその材質や形など、さまざまなものがあります。大きくわけると、比較的短期間で抜け落ちてしまうものと、長期間、鼓膜にとどまっているものの2種類です。
長期間鼓膜にとどまっているものは、短期間で抜け落ちてしまうものよりも鼓膜に穴が残る確率が高くなりますが、繰り返す中耳炎の場合、何度も入れなおす必要がないなどそれぞれメリット・デメリットがありますので、医師としっかり相談し、状況にあった選択が必要となります。