急に耳に激痛が走った、こどもが夜中に耳が痛いと泣き叫んだ・・・。
または耳がつまった感じがして受診したら「中耳炎ですね」と言われ、「痛くないのに中耳炎??」と不思議に感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは「中耳炎」について詳しくお話ししていきたいと思います。
中耳炎は、中耳(鼓膜から奥の部分)に炎症が起こる病気です。
痛みや熱を伴うことの多い「急性中耳炎」
内耳に浸出液が溜まる「滲出性中耳炎」
他に「慢性中耳炎」や「真珠腫性中耳炎」「航空性中耳炎」
などもあります。
一般的に「中耳炎」とだけ言う場合、急性中耳炎を指すことが多いようです。
どうして中耳炎が起こるのでしょうか?
上図のように、中耳は耳管という管で鼻や喉とつながっています。
中耳は一つの部屋(中耳腔)で一定の空気が満たされています。
中耳腔の空気の換気は、鼻の奥で喉の上の部分に開いた耳管によって行なわれています。
高い山に登った時や飛行機の離着陸時に「耳がつまった」感じ(耳閉感)を経験されたことがある方も多いと思いますが、その時あくびをしたり唾を飲み込んだりすると耳のつまった感じがとれるのは、耳管が開いて中耳の空気圧を調節するからです。
カゼをひいて喉や鼻の炎症が耳管に及ぶと耳管炎という状態になり、耳管の粘膜が腫れて中耳の換気が不十分になり、中耳腔が陰圧となり、耳が塞がった感じや難聴、耳鳴りなどの症状を起こします。耳管の炎症がさらに中耳腔までおよぶと中耳炎となります。
滲出性中耳炎は小児と高齢の方に多く見られます。
また慢性的に鼻に疾患がある場合(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など)や アデノイド肥大などがあると耳管が圧迫されて狭くなり、これが原因となって中耳炎を起こすこともあります。
耳管の最も重要な役割は、鼓膜の内側と外側の気圧を一定に保つことです。鼓膜の内側の鼓室は耳管を通して外へとつながっていますが、耳管は普段は閉じており、あくびや嚥下の際に開いて外の空気を鼓室内に取り入れ、気圧を一定に保っています。
耳管が閉じたままだと、鼓室の中の空気はだんだん減ってきて、陰圧になる傾向にあります。つまり、耳管が時々開いて外界と鼓室との気圧差をなくさないと鼓室内の気圧が徐々に低下してしまうのです。
高い山に登ったり、飛行機に乗ったりした際に耳がつまったような、音がこもるような不快を感じた経験がある方も多いかと思います。これは、外の気圧と鼓室内の気圧が一定ではないために起こっています。このような不快感が生じたとき、耳抜きをすると、耳管を通じて鼓室に空気が送り込まれ症状をなくすことができます。
耳管の機能は、生まれたときから十分に備わっているわけではありません。乳幼児期には耳管機能はまだまだ未熟で、十分な働きができません。ですから、急性中耳炎や鼻の炎症などをきっかけに、すぐに鼓室の換気が悪くなってしまいます。耳管機能は、その後、成長とともに徐々に発達し、10歳位でほぼ成人と同等の機能が備わるといわれています。
また、耳管の換気機能は、加齢により低下し、50~60歳代以降には徐々に低下していきます。