中耳炎をもっとよく知りたいと思われる皆様へ
中耳炎という病名はみなさんよくお聞きになったことがあります。
ただ一概に中耳炎といいましても、急性中耳炎や、滲出性中耳炎など、いろいろなタイプの中耳炎がございます。
治療方針に関しては、ガイドラインがあるものの、施設により若干見解の相違があるのも事実です。
そこで梅華会耳鼻咽喉科グループとしての治療に対するこだわりを説明させていただきたいと思います。
鼓膜切開はなるべく避け、必要最小限とする。
治療方針を理解し納得いただけるよう説明する。
画一的な治療ではなく個々にあった治療を志す。
鼓膜切開は子供にとっては怖い手術です。(大人でも怖がる方は多々いらっしゃいます)できるだけ切開は避けて、少々時間がかかっても通院治療での完治を目指し ていきたいと考えています。
大昔の先生は中耳炎全例に対して切開をしていたという話も聞いたことがあります。
逆に現在では鼓膜切開をしない治療法も確立されてきましたが、昔の名残で鼓膜切開の基準が低くなっているのではないかという考えを持っております。
現在は抗生物質の発達と衛生環境の改善で、中耳炎も服薬や処置等の治療をしっかりすれば治りやすい疾患といえます。
ただし、発熱の持続や、内耳炎合併の恐れがある場合など、やむを得ず切開を必要とするケースもあります。もちろん鼓膜切開にあたってはメリットデメリットを勘案して判断する必要があり、当院ではきちんと説明をさせていただいた上で手術させていただいております。
ご不明な点はなんでも医師にご相談ください。
鼓膜切開を要するケースは梅華会全体の2~3%くらいと考えていただければと存じます。
ガイドラインに従い、投薬はセフェム系・ペニシリン系の抗生剤および合剤を使用いたします。鼻汁の状態や難治性の場合はカルバペネム系やニューキノロンを考慮にいれます。なお初期治療には一般的にマクロライド系を使用することはございません。
ほとんどの中耳炎がはなおよびのどからの感染が、耳管という、はなとのどの間をつなぐ管を通して発生するため、はなやのどの処置及びネブライザー療法は必須と考えております。
また耳の中は耳鼻科用機械を使用しないとしっかり見えませんので、当院では、専用カメラで拡大観察し、しっかりと治療効果を確認しております。
中耳炎のタイプによりますが、一部の中耳炎に関しては詳細な検査及び手術療法が不可欠なケースがあり、近隣病院にご紹介させていただくこともあります。
時々患者さんからご指摘やご心配の声がありますが、「耳鼻科」での処方と「小児科」での処方内容が異なるため小児科で「強い薬処方されているね」と言われた、とかご指摘をいただくことがあります。(逆のケースもあります)
中耳炎の治療には一般医師に向けたガイドラインが策定されており、当院ではその治療方法に則って治療しています。漫然と弱い抗生剤では完全に治らず、慢性化するのを抑えるためであることをご理解いただきたいと思います。
短期的に強い薬でしっかりばい菌をやっつける必要な時期もあることをご理解いただければと存じます。ただ滲出性中耳炎 については治らないので、長期的に服薬が必要な場合がございます(マクロライド少量長期療法といいます)
以上のケースといいますのは、中耳炎の中でもそれほど頻発してみられるものではありませんが、それでも上記症状や視診により、切開をご相談させていただく場合もございます。
いずれにせよ、どうしても鼓膜切開を要するケースもあるということをご理解いただければと存じます。
耳漏が出ているときは頻回に処置をする必要がります。耳漏そのものがばい菌の温床となり、なかなか完治しないばかりか、鼓膜に穴が開いて閉じない現象(慢性中耳炎化 )を防ぐことが目的です。慢性化すると、投薬治療では改善せず、入院による鼓膜閉鎖術を要する場合もございます。
あるいは鼻水が大量に出ているときは鼻の処置の通院が必要となります。同じく感染源を絶ち、耳にたまっている炎症を鼻に排出させることが目的となります。
また頻回のネブライザ―治療により、鼻の炎症を根本から抑えることにより早期治療が見込めるケースが多いです。
当院における極小ファイバーにて耳の中、特に鼓膜を観察いたします。また経過により聴力検査・ティンパノメトリー検査で他覚的評価を要する場合もございます。
鼻内所見も重要であり、中耳炎の感染源を特定したうえで、鼻の中の炎症をターゲットにした投薬治療の選択も必要となります。
いずれにせよ、中耳炎は耳鼻咽喉科すべての領域に関わりますので、総合的に判断したうえで、今後の治療方針を決定していくことが重要となります。